佐藤八重子さん
Q 佐藤さんは長らく鴨川の文化活動を支えてくださっています。その元気の秘訣は何でしょうか。
A 私は、日々、目にすることを日記のように短歌に綴ってまいりました。特別に何かをやってきたということはございません。
そのようなことが積み重なって皆様のお力もいただき、「風と共に」という歌集も世に出させていただいたと思っております。
Q 佐藤さんは伊藤左千夫、斎藤茂吉、島木赤彦らとともに日本近代短歌史に名を刻んだ、郷土の歌人である古泉千樫先生の姪に当たられますが、長狭にある「みんなみの里」も古泉先生の短歌のご縁と伺っておりますが。
A はい、千樫の歌に「みんなみの 嶺岡山のやくる火の こよひもあかく 見えにけるかも」というものがございます。
千樫が詠んだ鴨川の自然と、みんなみの里が象徴する里山の風景は、鴨川の自然美と文化を伝えるというところでつながっているのではないでしょうか。
Q 佐藤さんの目には、今の鴨川はどう映っていますか。
A たいそうなことは申し上げられませんが、鴨川には本当に良いところ、素晴らしいところがたくさんございますでしょう。
誕生寺や清澄寺などもそうですが、それをうまく活用できていないのではないかと日々感じております。
ぜひ、以前の活気を取り戻してほしいと願っております。
日々目にする情景こそ鴨川が大切にすべき宝
対談の中で「日々、目にすることを短歌に綴っている」とお話しされました佐藤さんの短歌の中でも私が最も好きな歌は、
「ほとばしる 夏柑のしる口中に はじけて青き 鴨川の海」です。
自然や郷愁、人の心の繊細な動きを捉える佐藤さんの目に、今の鴨川はどのように映っているのか伺いました。しばらく考えた後、返ってきたお言葉は、「良いところがたくさんあるのに、うまく活用できていないですね。」
鴨川が持つ資源や魅力が十分に生かされていない現状への想い、そして今の鴨川に対する佐藤さんの特別な想いが、その言葉に込められていると感じました。
地域の大切な宝を改めて見直すこと、そしてそれをしっかり発信していくこと――それが、鴨川再生の基本であると強く思います。